ふるさと納税について思うこと

 1.はじめに 

 ふるさと納税制度について、いろいろと話題になっているので思うところを書いたものである。

 

 2.ふるさと納税の理念 

 平成20年に始まった制度である。総務省によると、「ふるさと納税で『地方創生』」と題して、下記の三つの意義を掲げている。

「・第一に、納税者が寄附先を選択する制度であり、選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけとなる制度であること。それは、税に対する意識が高まり、納税の大切さを自分ごととしてとらえる貴重な機会になります。

・第二に、生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度であること。

それは、人を育て、自然を守る、地方の環境を育む支援になります。

・第三に、自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと。

それは、選んでもらうに相応しい、地域のあり方をあらためて考えるきっかけへとつながります。」 

 現在、この理念が浸透しているというよりは、税額控除としての節約術や得する方法として一般のひとには認知されているところがある。総務省では、平成29年4月1日に「ふるさと納税に係る返礼品の送付等について (総務大臣通知)」で各自治体に良識ある対応を求めている。返礼品にふさわしくないものの例示や返礼品の総額を3割以下に抑えることなどを通知している。

 

 3.思うところ

 ふるさと納税の地方創生を目指す理念には大いに賛成するところである。問題は本来の趣旨に反する高額な返礼品等による加熱する自治体間の競争である。ある(居住地以外の)自治体にふるさと納税として納めれば、納めたひとの居住地の自治体の所得税と住民税が減る仕組みである。不当な競争で税収が減ったのならば、減った自治体にとってはよろしくない制度と言えるだろう。平成29年12月18日河北新報の朝刊で宮城県内のある自治体の副市長が「(略)法的な要請でない限り、今後も現行のまま続ける」と答えている。正直な回答である。しかしながら、法的義務がなければ従わないというのは全体の奉仕者であるものの発言としては適切なのだろうか。この自治体の住民等が、憲法、法律や条例に定めがなければ従わないといった場合、町内会活動等を始めとした住民自治は成り立つのだろうか。また、基礎自治体が担う小学校、中学校の生徒たちに、道徳的な問題があっても法律等の拘束・罰則がなければ従わなくて良いと教えるのだろうか。実際にこの自治体の返礼品のパンフレットを見てみたが、主に返礼品はふるさと納税額の5割程度のものとなっている。私は5割程度であることが一番の問題とは思っていない。商品の中に、この自治体とは特に関係のないような返礼品が含まれている点に問題があると考えている。全国どこでも販売しているものを返礼品として、返礼の金額に上限がないとすれば何でもありとなってしまうはずである。本来のふるさと納税の趣旨に基づき寄付金の使い道に力を入れている自治体や総務省の通知に従った自治体が損をするようでは、世も末である。一方でこれも一つの戦略であるとも言えなくもない。当然、自治体もお金は必要である。お金があればあるほど住民サービス向上をはかれるのは事実である。自主財源の確保というのは非常に難しいものである。だからこそ実際にお金が入ってくるのだから、なりふり構わずお金を集めるという姿勢が今後の自治体間競争の姿なのだろうか。これはこれでふるさと納税の当初の理念である第1と第3を達成できている。自治体も民間的のノウハウを取り入れた経営を行うべきと言われ続け、ニューパブリックマネジメント等の公会計改革が進んだ現在の自治体の姿の一側面をこのふるさと納税制度があらわにしたのかもしれない。まずもって集めたふるさと納税(寄付金)の有効活用を期待したい。

 一方で、利用者の立場からすれば、返礼品は高価なものの方が嬉しいのは事実である。ふるさと納税の額は、平成28年度には総務省によると2,844億円となっている。国民のニーズの高くや税に対する意識が高まっている現状に急激な締め付けで縮小させるべきかどうかは難しいところである。良くも悪くも広く周知されているふるさと納税の今後も見ていきたい。

 

閃光のクレア

<参考文献〉

総務省ふるさと納税ポータルサイト 平成29年12月19日アクセス

<http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/080430_2_kojin.html>

平成29年12月18日河北新報朝刊<ふるさと納税>

宮城県多賀城市御礼の品【返礼品カタログ】