1.はじめに
仙台市では、外部監査制度を平成11年度から実施している。この結果についてあまり周知されていないこと及び結果を仙台市役所が真摯に受け止めていないようなので今回書くことにした。
2.外部監査制度とは
仙台市ホームページ「外部監査制度」によると、
『「外部監査制度」は,市の組織に属さない外部の専門的な知識を有する者が,市長との外部監査契約に基づいて,市の財務の監査を行う制度です。 監査機能の専門性・独立性を一層充実させるとともに,監査機能に対する市民の信頼感を高めるため,平成9年の地方自治法の一部改正により導入され,仙台市においては,平成11年度から実施しています。』
としている。以前に行政委員会制度のところで書いたが、監査委員会というものが既にどの自治体にもある。そして、議会という行政を監視する機関がある。それでは不十分であったことより導入されたと言っていい。ただし、監査委員会、議会そして外部監査制度が重複しないよう外部監査制度による監査の範囲は限定的なものとなっている。監査委員会と議会が機能していれば必要ないはずだが、残念ながら能力的または独立性に問題があり外部監査制度が必要なっている。
3.制度の概要
外部監査制度には、「包括外部監査」と「個別外部監査」の2種類がある。総務省の公開資料「外部監査制度の概要」によると
『1趣旨
地方公共団体の組織に属さない外部の専門的な知識を有する者による監査を導入することにより、地方 公共団体の監査機能の専門性・独立性の強化を図るとともに、地方公共団体の監査機能に対する住民の 信頼を高める。
2概要
(1)包括外部監査契約に基づく監査
○毎会計年度、外部監査人のイニシアティブによる監査を受ける。(法§252の37③)
○都道府県、指定都市、中核市については、契約を義務づける。(法§252の36①・令§174の49の26)
○その他の市町村は条例により導入することができる。(法§252の36①)
(2)個別外部監査契約に基づく監査(法§252の39~§252の43)
○議会、長、住民から要求のある場合において外部監査人による監査をすることが適当であるときは、 外部監査人の監査を受けることができる。
○地方公共団体は条例により導入することができる。
※外部監査契約は議会の議決を経て契約する。(法§252の36①)
3外部監査契約を締結できる者
弁護士、公認会計士、税理士、地方公共団体において監査等の行政事務に従事した者など監査の実務に 精通している者(法§252の28①②) 』
となっている。このブログでは包括外部監査について取り上げる。仙台市は指定都市なので契約は義務づけられている。かみ砕いて言えば、大きい自治体はきちんと外部の弁護士や会計士などの有識者に運営状況を見てもらいなさいという制度である。上記2の概要(2)を見ても議会では対応しきれない案件や独立性が求められる案件がある、想定しているというのがわかる。
4.仙台市の状況
まず仙台市の評価できる点としては、結果についてはきちんとホームページに誰でも見られるように公開していることである。全てについてこのブログで取り上げることはできない。例えば、平成27年度は「八木山動物公園に係る財部事務の執行と管理運営について」(178ページ)、平成28年度は「水道事業に係る財務事務の執行及び管理の状況について」(96ページ)となっている。両方とも目を通したが、企業環境(歴史、概略等)、財務状況に始まり現在の運営状況が詳しく書かれていて、最後に「指摘」、「意見」、「所感」が書かれている。外部の有識者がまとめたものだけあって、仙台市役所(行政)に不利な記述を含めて事業の状況が詳細でわかりやすくまとめたものとなっている。ただし、詳しすぎて全文を読むのには労力がいる。概要版も公開されているのでそちらに目をとおすことでも多くの情報を得られることだろう。具体的に八木山動物公園への外部監査の内容をみていくと、「ジャイアントパンダ誘致」についても1節を設けている。この結果報告書から引用すると
『【意見17】
(ジャイアントパンダの導入計画について)
絶滅危惧種であるジャイアントパンダを導入するのであれば、純粋に、繁殖を目的とした本格的な取組を仙台市として実施する覚悟がなければ、実施すべきではないと考える。
動物公園では、現在の動物公園内にパンダ舎を建設する計画のようであるが、現状では動物公園は狭く、その上、多数の動物を飼育している現状を考えるなら、あまりにも雑然とした環境で飼育することになり、他の飼養・展示動物の福祉の側面からも問題がある。
さらには、狭い動物公園に、多くの入園者が押し寄せた場合、入園者の安全を確保できないと考える。動物公園では、集客施設に関する損害賠償保険に加入しているが、それ以前の問題である。
ジャイアントパンダの導入については、絶滅危惧種の動物であることや、動物福祉の視点、入園者の安全性の確保、及び市の財政の面からも慎重になることが望ましい。』
と書かれている。的を射た意見である。とても内部の人間では外部に向かって言えない意見である。また、八木山動物公園を監査に選んだ理由として、目標入園者数を「100万人」としていながら、実際には「50万人程度」であり乖離が大きいことを挙げている。こういった指摘ができるのも外部監査人ならではである。
5.外部監査制度の有効性について
「八木山動物公園に係る財部事務の執行と管理運営について」では、指摘が16個、意見が17個ある。
『「指摘」とは、財務に関する事務の執行等において、違法または著しく不当と判断されるので改善すべきもの。
「意見」とは、組織及び運営の合理化の観点から改善が望まれるもの。』
とこの報告書に記述されている。
この結果報告書に対して、仙台市の回答は公表されていない。また、平成27年度に行われたものであるが、その後の改善状況を知るすべはない。つまり、いくら的を射た素晴らしい意見の結果報告書を作っても参考資料の扱いで終わってしまうのである。外部監査人への報酬・費用はもちろん仙台市から支払われる。現状を見ていると指定都市は外部監査が義務づけられているから、一応実施しているといった程度であろう。仙台市において、有効性は低いと言える。これだけの指摘や意見を活かそうとした何らかの取組が見られない。率直に言ってもとてももったいないことである。議会でよくわからない質問に答えるよりは、こちらの外部監査への対応をしっかりした方が仙台市にとって利益になると思う。この外部監査についてはメディアの取り上げもなければ、市民の関心もない。そもそもこの制度を知っている人がどれぐらいいるのか疑問がある。この制度の周知の一助になればと思いブログを書いた次第である。
閃光のクレア
〈参考文献〉
総務省公開資料「外聞監査制度の概要」
仙台市ホームページ「外部監査制度」平成29年12月29日アクセス
(http://www.city.sendai.jp/kansa-somu/shise/reki/kansa/gaibukansa.html)
仙台市の包括外部監査報告書「八木山動物公園に係る財部事務の執行と管理運営について」